キネマ旬報 2009年 2/15号 [雑誌]
キネマ旬報2008年度の日本映画部門での受賞者は最優秀主演男優賞は「おくりびと」の本木雅弘さん
最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞も「おくりびと」と滝田洋二郎監督と小山薫堂さんが受賞して改めて「おくりびと」の人気、優れた作品だと思います。米国アカデミー賞最優秀外国語映画賞で日本の作品で初受賞おめでとうございます。他にも最優秀主演女優賞に「トウキョウソナタ」、
「グーグーだってねこである」の小泉今日子さんや最優秀助演男優賞に「クライマーズ・ハイ」、「
アフタースクール」の堺雅人さんなど今の日本映画界を支えている人気の役者さん達が揃ったという印象です。2008年度は2006年度以来2年ぶり洋画の興行収入より邦画の興業収入が上回り相変わらずTV局制作の映画は多いのですが「闇の子供たち」や「接吻」、「ブタがいた教室」など単館上映系の映画の方がメッセージ性が強く独自性の強い良作の映画を生み出している気がします。
日本映画の好調さが見えた気がします。これからもいい日本映画が見られることを期待しています。
クライマーズ・ハイ
傑作という評判は聞きながら読む機会がありませんでしたが、佐藤浩市氏主演でドラマ化された本作品を昨年暮れに観て原作を手に取った次第。
悠木は40歳にして訳あって部下なしのブン屋ですが、日航ジャンボ機墜落事件の専門デスクに指名されるという千載一遇のチャンスを得る。
航空機事故史上未曾有の規模の惨事を報道する地元有力紙の専権デスクという職責からくる高揚感・責任感・不安感の間を行きつ戻りつする
悠木の心情描写はその(言葉は悪いですが)ヘタレぶり、という意味においてリアリティをもって読者に迫ります。
40歳は「不惑」の年と言いますが、わたし自身もその年齢を前にして迷いっぱなし。悠木も「報道」はこうあるべしと信念はもちつつも
現実に判断を下す段になると惑いが。その悠木の惑う様を通し「仕事とは」「人生とは」「男とは」という根源的な質問が、本書のラストのラストに至るまで繰り返し繰り返し読者にぶつけられることになる。
読みながらまさに自分が「クライマーズ・ハイ」状態になって読了。傑作。
ベスト・オブ・ナット・キング・コール~L.O.V.E.
ウォン・カーウァイ監督作品『花様年華』の中で、たびたび登場しては、映画に哀愁・情愛・無常感・悲哀など様々な効果を与えていました。
ナット・キング・コールのベスト盤でも、この曲が入っていない物もありますので、迷わずこのCDを買いました。
カッシーニ(初回生産限定盤)(DVD付)
元ちとせは、独特の歌いまわしを持っている歌手なので、割と好き嫌いが分かれる歌手なのかな、と思います。自分も、どちらかと言うと、今までは苦手な方だったのですが、今回は帯に記されている豪華プロデューサーの名前に魅かれて購入しました。
様々な色のあるプロデューサーが集結すると、ボーカルに力のない歌手は、ともすると、それぞれのプロデューサーの個性の方が出てしまい、統一感がなくなってしまうのですが、元ちとせは、そのあり過ぎるとも言える個性的なボーカルで見事自分のものにしています。苦手だった歌いまわしも、聴くほどに癖になり、かなりハマってます。
おススメは坂本龍一プロデュースの「静夜曲」。シンプルな日本的な情緒を感じる曲で、彼女の伸びやかな高音が本当に美しい曲です。
クライマーズ・ハイ [DVD]
迫真の演技が光るドキュメンタリーのような映画です。
御巣鷹山の現場に上り、死体が散乱した戦場のような情景を見て、
錯乱してしまう記者。
過去の「大久保・連赤」事件報道の栄光にしがみつく新聞社内の
古い世代の妨害に遭い、怒りを爆発させる主人公。
などなど、そのリアリティーに圧倒させられました。
1985年の日航機墜落事故を事件記者の立場から見る、という目の
付けどころも素晴らしいと思います。
結果的に辛口評価になってしまったのは、
新聞社内の政治的な争いばかりがクローズアップされ、記者にとって
「何を伝えるのが正義なのか」という点が少しおろそかにされているように
感じたからです。
地元群馬で起きた事件だから、地元紙が1面シリーズを続けなければならないのか。
地元紙だから情報量で他紙に遅れを取ってはならないのか。
全国紙にスクープ合戦で抜き勝つ事が、地方紙記者の使命なのか。
もう2度と無いような大事件だから「燃える」のか。
けっきょく、何を伝えるのが記者の「正義」なのでしょう。
記者達をここまで駆り立てたのは、いったい何だったのでしょう。
そこを深掘りして、ラストシーンの感動までつなげて欲しかったです。
何となく、一般社会から遠く離れた「記者の世界」という閉ざされた世界の
中での出来事のように感じました。
私はそこがどうしても気になって☆3つにしてしまいましたが、
気にならない人にとっては文句無く☆5つの映画だと思います。