マタギ 矛盾なき労働と食文化
過去これほどまたぎに身近な所で生活をあぶりだした本があっただろうか。
ぼくは猟師になった と続けて読みました。
マタギは漫画で読んで以来興味がありました。
ただその姿は誇張された伝説ばかりのような気がしていました、作者は彼らと同行する中でその姿が誇張でない事を証明してくれました。
後継者も無く滅び行くマタギの世界、後世に残すべき名著です。
是非一読下さい。
たぶらかし
ほんとうにありそうな「たぶらかし」業、それは役者の派遣。
このままおもしろい連続ドラマになりそう。
着想がおもしろく、文章もきちんとしている。
著者は二度の最終候補を経て、小説すばる新人賞を受賞した。
あきらめないで書き続けた努力、そしてガッツというか執念が、作品に溢れている。
主人公は冬堂マキ、食えないが知る人ぞ知る役者、
「伝説の女スナイパー、サグラダファミリア、通称赤マムシ三平太」。
5年前、両親の海外移住でパラサイト不可となったマキ。
藁をもつかむ感じでヤバイ会社に就職、そこは1日で退社するも、
同じビルに役者募集の張り紙を見つけ、飛び込んだ。
即採用された会社の業務内容は、役者の派遣。
自殺死をとりつくろう遺体、
新妻の親戚付き合い代行、
セレブな母親代行。
世間をたぶらかそうとする、ひとクセもふたクセもある依頼者たち。
マキは、むちゃぶりされた役を見事に演じることで、
彼らの人生と深く関わることになる。
この作品だと、姫野カオルコと作風が被る気がするが、
凄味のあるパワフルな書き手だと思う。
今後に期待。
邂逅の森 (文春文庫)
ここ数年に読んだ本では白石の「一瞬の光」に次ぐ感動作。邂逅を通じて主人公が成長していく過程は、まさに筒井の「旅のラゴス」に通じる(鉱山での生活などはそのもの)。「東北」と「熊の肝」に非常に興味が出てくる物語(「もののけ姫」ほど臭くありません)。