大鷲の誓い デルフィニア外伝 (C・NOVELS Fantasia)
本来なら出会うはずもない二人がいかにして出会ったのか。ナシアスとバルロが親交を深めていく様子が描かれています。
初めて出会った頃はいかにも貴族らしい傲慢さが前面に出ていたバルロ。果たしてナシアスと出会わなかったら、彼はどんな人間になっていたのだろうかと思います。本質は変わらないかもしれないけれど、部下の心がつかめない人間になっていたかもしれない…
一方で、ナシアスにとってもバルロとであったことは幸運であったはずです。それを実感として感じるのはずっと先立ったかもしれませんが。
お互いに与え合うところがあったからこそ、長く付き合うことができる。そんな良き関係の始まりの物語がここに。
帰らぬオオワシ―猟師七兵衛の物語 (偕成社文庫 4049)
1975年に出た単行本を1981年に偕成社文庫化したもの。
著者は岩手で小学校教師をつとめながら、県内の動物の調査、古老や猟師への聞き取りを繰り返し、やがて動物文学作家になった人物。
本書は児童書ではあるが、内容の面白さ、重さは大人をも十分に楽しませるもの。
三陸・船越半島に住む猟師の一生を追いつつ、動物の減少と絶滅の問題に迫っている。背景になっているのは、明治20年代〜1970年頃まで。猟師・七兵衛は、その一生で無数のワシやタカを撃ってきた。少年〜青年時代は名人とうたわれ、疑いを抱くこともなく「害鳥」であるワシを殺し続けた。しかし、ワシは急激に数を減らし、また、規制・保護も厳格になっていく。そのなかで七兵衛自身も自分のやってきたことが本当に正しかったのか、反省を促されることになる。
悲哀に満ちたラストには考えさせられる。
銃の発達、狩猟法の変遷、動物のいなくなる過程など、下調べが厳密。動物と日本人の関係を振り返るのに、価値ある一冊だと思う。