ウェルカム トゥ パールハーバー(上)
今まで知っていた歴史に、こんな隠された事実があったとは…
日本人として、胸のつかえが取れた感のある作品でした。
かなりの長編ですが、作者の世界にどんどん引き込まれ
一気に読んでしまいました。
とても興味深い、とても面白い作品です。
渓流讃歌―フライロッドを持って旅に出たくなる14の物語 (FlyRodders選書)
渓流讃歌 湯川豊 他 地球丸 2009
副題:フライロッドを持って旅に出たくなる14の物語
14人のフライフィッシャーによるエッセイ集。1938年生まれの湯川氏から1960年生まれの樋口明雄氏、1961年生まれの須山氏と比較的中年以降の方が執筆者である。
それ故か落ち着いた文章が綴られているようにも思える。雑誌フライロッダーに掲載されたモノがメインに収められている。個人的には佐藤盛史氏の「風狂」が良かった。つり人として釣りを取り巻く不安材料を利他的に行動することが、これからの自分の人生だと吐露している。
芦澤一洋氏が存命なら何を書かれるのかと夢想してみた本書でもある。
夢顔さんによろしく 下―最後の貴公子・近衛文隆の生涯 文春文庫 に 9-4
著者近年の代表作、再版されないことの多い著者の本では例外的に版を重ねている人気作でもある、一部では傑作との評判もあるようだが、力作ではあっても決して傑作ではない、が評者個人の判断、
近衛首相の長男がソ連に抑留され獄死していた、という事実を広く知らしめた点と文隆という少々魅力的な人物の存在をクローズアップしたことが最大の功績であろう、
著者の筆致はとても文隆に「好意的」です、好意的な解釈を省き時代背景と文隆を取り巻く状況を考慮したときに見えてくるのは、近衛文隆という人物の「呑気さ」です、彼の持って生まれたような呑気さを現在の我々は「脇が甘い」と普通は言い表します、わがまま放題の二世タレントがよくスキャンダルを起こすあれです、従って恵まれた家庭のぼんぼんを通した昭和前期の物語と読んだ方がいいでしょう、文隆も父親に似て調子の良さと浅はかさが同居していることに驚き、いまだに近衛文麿の歴史的な評価が定まらないことも思い出される物語です、
著者は1940生まれ、いわゆる団塊の世代の一つ上の世代である、左翼に対する姿勢が実に曖昧、単発のエッセイでは、シベリア抑留は拉致であり犯罪である、と明解に発言しているが本作における描写では悪いの戦争、もしくは戦争を始めた日本が悪い、といった平和ボケ読者の志向と合致してしまうおそれが大きく、抑留は針小棒大に語られる南京虐殺などとは次元が違うまさにソ連(共産党政権の国家)による犯罪である、とはっきりと描写すべきであったろう、
著者は基本的に短編作家であり、本作のような長編は向かないと考える、単に時系列上に起きる事柄を物語風に並べているページが多いことに全ての読者が気付くだろう、
これも作家能力の限界なのだろうが、情景の描写力は相変わらず進歩していない、よって娯楽性が損なわれていることも否めない、もし娯楽性を優先するならばもっと原稿を刈り込んで短い作品にしたほうが絶対に良かった、編集者にも責任の一端はある、