地獄のアリス 1 (愛蔵版コミックス)
設定などで「砂ぼうず」を想起した。
あちらではなんだかんだといいながら「人死に」はほとんど無かったが(ウンコ塗れはあったが)、おやまあ、死ぬわ殺すわ裸にひん剥くわ犯すわ切断するわ、こりゃまたもう。
砂ぼうずが「中ニ」の世界観だとしたら、これは「高二」くらいでしょうかね。
女の裸や陰毛やセックスにこだわりなく描写しているところは潔いですね。
局部にモザイクがかかっているのが愉快です。
陰謀、策謀うんぬん、もーてんこ盛り。
「暴力は統治の手段」「法の無い世界では暴力の暴発も予想内」と割り切っている大人が居るっていうのが、したたかでしぶとくてイイねぇ。
さて子供達よ、どーやって生き残るのかな。
地獄のアリス 2 (愛蔵版コミックス)
世界最終戦争後のような世界。超一流の狙撃手だが、私生活は悲しいほど情けない主人公。すでに家族を失って久しく、マンガ・オタクで、近接戦で役立たず、幼少期から虐待され、生きるために人殺しもいとわず、友達はいない。そんな悲惨な生い立ちに悲壮感は微塵もなく、タフに見えながら、情緒不安定さはその辺の子供とかわらない。その歪みが魅力を醸し出している。
地獄のアリス 3 (愛蔵版コミックス)
あんまり人にお勧めできないタイプの傑作である。いかに主人公がニヒルに浸ろうとしても、戦闘、拷問、強姦、屍姦を目の前にすれば、生きるためにトリガーに力を込めるしかない。この世界の住人は、外見が可愛く見えるほど中身は壊れて爛れている。凄腕の殺し屋ほど、華奢な身体とフリル入りのスカートを身に着けている。角眼鏡が真面目に見えるほど、冷酷な狂気が宿っている。ニーチェじゃないが、人々が内面化するべき価値規範は失われ、ボードリヤールじゃないが、身近なモノが従う文化的コードも倒錯して久しい。暴力的であればあるほどユーモアが漂いはじめ、必死であればあるほど何故か滑稽さがにじみ出る。そんな倒錯し逆説化した世界の情景が、まだ相対的に正気を期待できそうな主人公の視点から描かれる。
女子攻兵 2 (バンチコミックス)
巨大な女子高生の姿をした通常の攻撃が一切無効となる次元兵器・女子攻兵は、搭乗時間限界を過ぎると精神汚染により操縦者は異常を来たす危険が有った…。
兵器のデザインからコメディタッチの萌え風戦闘マンガと思いきや、混沌とした狂気じみた雰囲気が漂い、まるでバッドトリップ時の幻覚を見ているかの如き異形の作品です。
地球の正規軍と独立を目指す異次元移民軍の戦いを描いた本作、女子攻兵を駆る兵士達はただ戦争で死ぬだけではなく、どれだけ精神的に陵辱破壊されてから死ぬか、と言う極限の不条理な設定は、昨今の少女(の様な物)を戦わせる悲劇的な漫画の中でも際立って異彩を放っています。
それでも松本氏の描く女子攻兵のキャラクターデザイン、荒っぽくもポップなペンタッチと殺伐とした描写の合間に漂う奇妙なユーモアが本作をかろうじてエンターテイメントの粋に留めています。
混乱を極めた戦場&戦闘シーン、敵軍の異形女子攻兵、サナトリウム地区の描写に見られる書割の如きシュールなイメージは氏の独壇場です。
何故か全裸で目隠しをし、ロケットを仕込んだ射出刀を操る近接戦のエキスパート:イナミ軍曹等や、幼児型の女子攻兵に乗り、軍人精神の訓示を述べながら時々幼児言葉になるグレフェンベルク大佐等の切れたキャラクターが続出します。
逆に可愛い形の女子攻兵達があまりにも凄惨に破壊され、時に脱糞までする様子は相当悪趣味とも言えますが…。
作品世界の全てが超越的なコンピューター「預元者」の創り上げた壮絶な悪ふざけに思え、上層部すら原理も解らぬ超兵器を操縦しながら常に己が正気を問いている主人公タキガワの今後共々非常にスリリングな漫画です。
万人にはお薦め出来かねますが、松本次郎氏ファンの方、漫画表現の極北をご覧になりたい方には推薦です。