諸星大二郎 異界と俗世の狭間から(文藝別冊)
本書に投稿された、同業者による特別寄稿が格別に楽しい
江口寿史が「30年前の時点で諸星さんは既にミュージシャンズ・ミュージシャンのような存在だった」と語れば、高橋留美子が「諸星先生は間違いなく漫画家が憧れる漫画家です」と断言する。その傍らで藤田和日郎が出版社の忘年会でカチカチに固くなりながら紹介される瞬間を待っていたら、大御所に横から奪われてしまい絶望的衝撃で悔しがるなど、漫画家の皆さんから絶大にリスペクトされている様子が伝わって来て、ファンとして無茶苦茶嬉しい気持ちになれる。
はからずも同日に購入したカラスヤサトシ6巻にも出版社忘年会ネタのエピソードとして、
「あっ!○星大○郎先生だ!!」「えっ マジ!?」
と、そこに居合わせる漫画家たち全員がある一点に動き出してざわめく、という作品が載っていた。なんという尊敬のされ方であろうか。そのコマの上下に大きく書かれたカラスヤの解説文がまたふるっている。
「マンガ家が群がるマンガ家がいる まさにマンガ家の中のマンガ家!!」
…なんという凄まじさであろうか。
SF、ギャグ、ホラー、ストーリー、エッセイ等々、各ジャンルの漫画の達人達が口を揃えて、
まったく違う媒体で、同じことを言っている。誰もが言う。「モロ☆スゲエ!」
本書はそれほどまで諸星大二郎が漫画界に影響を与えている魅力の入口に
きちんと導いてくれる入門書として最適かと思われる。
あと、個人的に大喜びしたのは、吾妻ひでおの寄稿。
完全にあの懐かしの「不条理日記」を再現した、諸星リスペクト作品である
これを読めただけでも、本書を購入した甲斐があったというもの。
実にお買い得の一冊
壁男 [DVD]
うーん。期待しすぎていたからか、ストーリーがいまいちピンとこなかった・・・
ずっと思わせぶりな感じが続いているだけで、正直な所よくわからなかったです。
堺雅人さんの演技が素晴らしいことと、CM以外で見たことがない小野真弓さんの演技が以外といいかも
っていうのがすべてでした。
二人の演技を見たいと思ってる方にしかおすすめはちょっと・・・
暗黒神話 (集英社文庫―コミック版)
日本の神話、古代史、宗教、SF…といった幅広いテーマを融合した、伝奇マンガの名作中の名作。膨大で深い知識を惜しげもなく投入し、そこに独自の解釈やイマジネーション・フィクションを織り交ぜる事により、誰も見たことのない物語を紡ぎあげている。
1度読んだだけで全貌を理解するのは到底不可能だろう。昨今よく見受けられる長さのわりに内容の薄味な作品とは、対極にある作品です。この本はたった1冊しかないけど、実は超大作なのです。
なぜなら実際の連載期間は週刊少年ジャンプにたった6週間という短いものだが、描き始める前の構想・準備には、何と1年半もの期間を要したという事だからです。
まるで異界へと誘うような描線も他に類を見ないもので、タイムカプセルに入った弟橘姫がドロっと溶けてしまうシーンに強烈な印象を受けた。じっくりとコマの隅々まで眺めながら、そして何度でも読み返してほしい作品です。
無面目・太公望伝 (潮漫画文庫)
読み終えた時、体の震えが止まらなかった。太公望伝の最後の台詞の妙。この作品は諸星氏の傑作のみならず、漫画界の不滅の金字塔だろう。それにしても暗黒神話といい、孔子暗黒伝、マッドメンといい、氏は仙人のように達観しておられる。いつだったか、手塚治氏が取材者に、先生は天才ですね、と振られたことがある。手塚氏は言下に否定し、いや天才は諸星君のような人、とおっしゃったのは有名な話。その言葉を裏切らぬそんな作品だ。
手塚先生も草場の陰でさぞやご満悦であろう。
文藝別冊 吾妻ひでお 美少女・SF・不条理ギャグ、そして失踪
「失踪日記」以後の吾妻先生を取り巻く環境の変化を考えたら、吾妻先生の世界を大系的にまとめたム
ック本はもっと早く出すべきだったと思う。「失踪」を読んで何かサバイバル術の先生?的な誤解をされ
ている新規読者の方も居られるようなので・・。
本の内容的には目新しい切り口はないものの、広大な吾妻ワールドをほぼ網羅しガイド役として充分な
内容が有ると思う。でも再録も多くて寄稿しているのは年寄りばっかりなのは、どうなんだろう?個人的
にはもっと若い世代の漫画家等が吾妻先生の事をどう思っているのか?を知りたいのだが・・。
兎も角、こうして繰り返し読み直され研究される事で作品と作家は世代を越えて残って行くのだと考え
ればこの本が出版された意味は大いに有ると思います。
日本人には周りに合わせ過ぎる怖い一面があって、才能有る人を皆で無視、黙殺し終わコン化する悪習
が有るような気がします。漫画版「ナウシカ」連載時の干されていた宮崎駿しかり、吾妻先生しかり・・。
自分はファンである事を恥じていたと言うか大っぴらに出来ないモヤモヤした時期が確かに有りました。
もしかしたら今も大切な誰かを忘れようとているのかも知れないと思うと何だか怖い気がします。名前
も思い出せない大切な誰かを・・・。