DCユニバース:レガシーズ Vol.1
クライシス後に整理された年表に従って、一市民の視点から描かれたDCコミックスの歴史です。個人的にはゴールデンエイジのキャラクターの活躍を総じて観る事が出来る点で結構嬉しいのですが、この図式は「マーヴルズ(マーベルズ)」と被っており、改めてカート・ビュシークとアレックス・ロスの凄さを思い知るばかりで新鮮味の無いものなのですが、執筆しているライターやペンシラーやインカーが、正にDCの歴史を語る記念誌と呼ぶにふさわしいものとなっています。まさか今になってサージャント・ロックの死に様を御歳80を越えるジョー・キューバートの絵で見る事が出来るとは…。それだけでも一見の価値はあるのですが、本編でも、息子アンディ・キューバートのペンシルにジョー・キューバートが筆を入れる父子のコラボレーションをたっぷりと見る事が出来ます。アンディ・キューバートのデビュー当時はペンシルとインクが逆の立場でしたから感慨深いものがありますし、ジョー・キューバートの年齢を考えると、背景にまで及ぶその伸びやかな線に感動すら覚えてしまいます。
ただ、残念でならないのはスーパーマンが1938年から、バットマンが1939年から、ワンダーウーマンが1941からDCコミックスを牽引して活躍していた事実が本当に全て「無し」ということになっている点でした。また、ジェイソン・トッドが二代目ロビンを襲名してすぐにクライシスが起きてしまった事になっています。クライシスまでに登場すべきキャラクターとしては他にもスワンプシングなど沢山挙げられるのですが割愛されています。他にもあれれ?と感じる点は多々ありますが、そうした時間軸の矛盾は、いかにDCコミックスの歴史が長かったのかを証明するものだとも言えます(元々ライターが責任を持って過去の歴史を調査してから物語を書けば良かったのでしょうが、そこがアメコミの出版事情の欠点でありながらも、常に刺激的なストーリーを展開できた点でもありますから今更仕方ないですねぇ…)。しかし、無かった事にされてしまったDCコミックスの歴史にも、良い味わいの秀作ストーリーが沢山あるのですがねぇ…。
物語に感動する類の作品ではありませんが、クライシス後に(一応)歴史の整理された記念誌として、大いに意味のある本だと思います。続巻のvol.2の出版や「クライシス・オン・インフィニット・アース」の出版が企画倒れにならない様、祈るのみです。
おまけですが、巻末に掲載されている表紙コレクション「THE ORIGINS OF LEGACIES」の最終ページ、「SHOWCASE」#15と#17の日本語説明文が明らかに入れ違っています。ご注意を。本誌の物語登場順に表紙を揃えたら、これだけ年代がごちゃごちゃになってしまっているのでは、こんなミスも起きるでしょうねぇ…。