殺戮にいたる病 (講談社文庫)
我孫子武丸の代表作と名高い一冊。連続猟奇殺人を巡る、
元刑事、犯人、母親の3者の視点で語られる。
絞られた登場人物、張り巡らされた伏線。トリックを一つに抑え、
一文も全体も引き締まった印象を与える良書。グロテスク描写に注意。

まず、初出が1992年であることに驚く。
作中で言及される、幼女連続殺人事件が起こった時は、
まだこのような話は非日常の異常事態として捉えられたはずなのだ。
現在では、良くある話として捉えられてしまう。
犯人視点での幼稚な思考、病的な心理、家族崩壊、見つからない手がかり
と並べると、まるで2007年現在に書かれたように感じられる。

犯人の心理がよく引き合いに出されるが、母親の異常心理も
相当にリアルである。探偵役(名探偵ではない)の元刑事側が、
周囲の人間との関わりからやがて活力を取り戻すのと反比例するように、
犯人側の家族は壊れていく。
この小説のような状況が15年も前に予言されていた。そして、その状況が当たり前のように
受け入れられる現在こそ、真のホラーであろう。

 

ハサミ男 (講談社文庫)
読了後にページを振り返りながら「は〜」とか「ほ〜」とか感嘆させてくれるだけで大満足。裏表紙の紹介文に「精緻にして大胆」とあるが、本当に優れた(計算された)構成が見事だった。何を書いてもネタバレになりそうで(そんなレビューが多いが)、できることなら予備知識は全く得ないまま読んだほうが読後感は堪らないものになる。一見荒っぽい文章も読み進めるうちに慣れてしまうし、考えてみれば「作者の個性」の範疇に収まるレベル。また主要人物の他、挿入されていく警察の捜査は、推理小説としての事件性を高めてくれるのだから面白い。二度三度読める傑作ではないか。

 

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
この新装版で初めて「十角館の殺人」に触れました。
私自身はミステリ初心者ですので、トリック自体にどうこう言うつもりはありません。
ただ、その見せ方が非常にうまい。
たった一行の記述で視界が開ける、この展開は思わず拍手を送りたくなるほど、奇抜で、鮮やかです。
最初にそのページを目にした瞬間、その瞬間にそれまでの世界が結びつき、ひっくりかえる。
読み終わってしまった今は、もう二度と同じ衝撃を味わえないことが残念ですらあります。

 

殺戮にいたる病 - 我孫子武丸 [我輩の小説 for iPhone]



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