シティ・ライフ [DVD]
私が日本語字幕翻訳を依頼されて手がけた作品ですが、日本語版制作会社のせいで何故か部分的に字幕が勝手に改悪されており、私の名前のクレジットもありません(こんな内容でクレジットされても困りますが)。日本語字幕には音楽家が決して使わない言葉が使われており、かつ音楽的表現が、音楽を知らない者によって非音楽的日常語にすり替えられています。日本語字幕業界の劣悪な実情が現れている作品です。原盤の内容は5つ星ですが、日本語盤は星1つなので、平均して星3つに相当します。英語がわかる方は、ぜひ輸入盤でお楽しみください。
ライヒ:ベスト
ロックからパンク、J-popもかじりつつハウス、テクノ、エレクトロ、jazz等々・・・と、色々なジャンルの曲
を広く浅く聞いてきましたが、ライヒの曲には今までにないような何か引きつけられるものがあります。
ただ何も考えずこの音楽に身をゆだねていくと、俗世から切り離されたような不思議な感覚になります。
私が初めてライヒに出会ったのは「different train〜」からでしたが、ちゃんとライヒのことを知ろうと
改めてこのアルバムを購入しました。これは充実したライナーノーツと、ライヒの名曲といわれている楽曲が
バランスよく構成されているので、ライヒ入門編としておすすめです。これをきっかけに全楽章を通して
聞けば、また新たな発見、感覚で音を感じる・・・というような経験ができるのではないでしょうか。
ちなみに、車の中で聞くと、どんな渋滞に巻き込まれてもいらいらしません(笑)
Reich: Different Trains, Electric Counterpoint / Kronos Quartet, Pat Metheny
前半の"Different Trains"は弦楽器と列車の汽笛の音が絡み合い、そこに人の声のサンプリングが乗る非常にクールな作品。後半の"Electric Counterpoint"はPat Methenyの奏でるギターが幾重にも重なり、繊細で深みのある楽曲に仕上がっています。共に普段テクノ等のクラブミュージックを聴いているリスナーの方々にも楽しめる内容になっているのではないかと思います。
表面が列車の線路、裏面がギターのネックという捻りの効いたジャケットも秀逸ですので、観賞用にも是非。
Octet: Music for Large Ensemble
ここに収められた「大アンサンブルのための音楽」と「八重奏曲」をもって
ライヒの最高傑作と考える人は少なくないだろうし個人的にも異論はないのだが
ライヒ自身は気に入らないところもあったらしく
のちに編曲したり演奏スタイルを変えてみたりしている
(そしてその評価は一般的にはあまりよくない)。
この曲が受けるのは要するに芸術音楽としての表現のしかたが保守的だからだと思う。
「大アンサンブルのための音楽」の聴かせどころは
中盤の拍子が変わるところでの巧妙さと
終盤に向かうにつれてフレーズの単位が大きくなることで
曲全体が雄大なものになっていくその予定調和的展開にあるし
また「八重奏曲」の魅力は速めのテンポに乗った
各楽器のスリリングな掛け合いにある。
しかしそれはミニマルでなくとも表現できるものであり
この2曲が傑作であるのなら結局ミニマル的表現技法は
優れたミニマル音楽を作り出すための必然性を持たないことになってしまう。
ライヒがこういった曲を二度と作ろうとしないのはそのあたりが理由なのだろうと思う。