棚の隅 [DVD]
丁寧なドラマでした。
8年前に幼子を残し出て行った前妻と再会します。
互いに人生の岐路を迎えています。
・前妻との再開
・おもちゃやから次ぎの仕事への踏ん切り
・前妻の結婚
新しい人生に踏み出すために、忘れられない過去としっかり決着をつけていく という話なのですが、
たんたんと進んでいくんです。特に大きな展開や仕掛けもなく、丁寧に丁寧に、、、、。
渡辺真起子さんの演技がすばらしく、ついつい最後まで見てしまいました。
映像は低予算映画らしく、昼のドラマのようにちゃちいところ満載ですが、
渡辺さんのしぐさや表情がこの映画全体に安心感を与えてくれています。
また、内田量子さんもほとんど不機嫌そうにしているのですが、子供と手をつなぐシーンの笑顔は
最高です。このシーンの為にこれまでの演技を伏線にしていると思わせます。
個人的には、設定をもう少し過去の時代にしてほしかった。おもちゃやの寂れ感がやや弱いので。
また、シーンに合わせた音楽をもう少しつけてもらえると、もっと楽に見続けられると思いました。
造花の蜜〈下〉 (ハルキ文庫)
後半のとあるくだりで横溝正史の「夜歩く」を思い出し、少し不安を覚えたのですが、
読後感は良かったです。
気持ちよく「だまされた!」と思えました。
蜜という単語のせいもあるかもしれませんが、具体的な性描写はほとんどないのに、
どこか不道徳な感じがします。
10代の少女がもつ危うさの描写は、私にとって親世代の男性作家さんなのに、
巧みだと思いました。
普通の人々の日常を切り取った作品集も、本作のような二転三転するミステリーも、
時代ものも、今まで読んだ限りでははずれがなかったです。
ちなみに、ミステリー以外でのおすすめは「一夜の櫛」という短編集です。
少女 [DVD]
同名小説を映画化したものです。ヒロインのコはあまりデータが存在していないので、よくわからないですが、AV女優やってた葵みのりチャンに雰囲気が似ています。(観てて誰かに似てるな?と思っていて思い出した) この作品で欠点を挙げるとしたら、序盤がつまらないということでしょうか。いろいろ伏線も張られているので、飛ばさずに観ると「ああ、こういうことだったのか。」と納得できる部分もあります。ヒロインの小沢まゆさん、なかなか名演だと思います。見て損はしない作品です。・・・余談ですが、そのまんま東さん出てますよ。
恋文 (新潮文庫)
ドラマ化されたテレビは見てませんが、作品はまるでTVのような
感じでそれぞれに、どんでん返しがある読み応えのある作品です。
中でも「私のおじさん」はやられたという感じがしました!
さすがは、直木賞作家と思われるほど、筋の組み立ては素晴らしい
ものがあり、筆者の他の作品は読んでませんが、この本の作品に
「はずれ」はありませんので、是非一読いださい。
丁度出張中に読みきれるような作品で、いろいろ考えさせれれた作品でした。
正直、こんな文書を作れる作家もいるのかと感心しました。
あとがきはチョッと読みづらいけれど、作品の素晴らしさが
よく伝わってきます。
戻り川心中 (光文社文庫)
花がモチーフの短編ミステリー集。
いずれも、大正末期から昭和初期が舞台だが、あまりに雰囲気が良く出ていて、
思わず作者の年齢を確認してしまった(今年還暦を迎えたばかり)。
よく考えたら、およそあり得ないプロットなのだが、
筆力で(それも自然に)読ませてしまう。
それと、いずれも動機が最大のポイントなのだが、ちゃんと
手がかりや伏線が置かれているのが「本格」的。
加えて練達な筆致に、一読、巻を措く能わず、で一気に読了。
それにしても、この人の文章は美しい。
詩的で情緒纏綿たる描写とはこのこと。
文学の香り高い本格物として稀有な作品、と思う。