プリンセス・トヨトミ
確かに面白い。ぐいぐいと引き込まれていく。
大阪を舞台に、会計検査院の調査官と都心の商店街の人たちが、
大坂城の地下にある「大阪国」をめぐって、絡み合うミステリアスな物語。
豊臣家の末裔を守るために存在する大阪国。
そこに、会計検査院によって調査の手が及び、
5月31日午後4時。大阪は全停止する。
大阪出身の作家だけに、耳慣れた地名がポンポンと飛び出してくる。
大阪を知る者にとっては、その街の佇まいや雰囲気を思い描きながら
読み進むことができる。
そんな中、こうした奇想天外の話を「なぜ信じるのか?」という調査官の問いに、
大阪国の代表が「父の言葉だから。」と答えるくだりが、とても印象的だ。
驚天動地のエンターテインメントの面白さのなかで、
背景に著者の原体験があるのではとも感じさせる、とても教訓的な場面である。
大阪に縁のある方はもとより、大阪に興味と関心をお持ちの方にお薦めの一冊である。
鹿男あをによし DVD-BOX ディレクターズカット完全版
「面白い」ひと言で言うと、これにつきます。
大鯰を鎮めるために悪戦苦闘の数ヵ月。鹿や狐、鼠に
振り回される鹿男こと臨時教員の小川孝信(玉木宏)と
歴史オタクの藤原道子(綾瀬はるか)、そして謎の女子高生の
堀田イト(多部未華子)。
メインキャストの熱演に話が進むにつれてグイグイ引き込まれていきます。
そして忘れてはいけない喋る鹿。おっさん声のその鹿も
最初は嫌なヤツですが、しだいに憎めない不思議な信頼関係に。
美しい奈良を舞台に丁寧に作られた「鹿男あをによし」。
このドラマをキッカケに奈良旅行に
出掛けた人、出掛ける予定の人は多いはずです。
視聴率は振るわなかったけど満足度は充分です。
未見の人は是非どうぞ!ハマった人は予約して発売を楽しみに待ちましょう。
鹿男あをによし (幻冬舎文庫)
大学の教授の勧めに従い、期限付きで奈良の女子高の先生を
することになったのだが、そこで経験したことは摩訶不思議な
ことだった。人間の言葉をしゃべる鹿が現れたとき、そこから
すべてが始まった・・・。
これほど面白さを徹底的に追求した作品は、ほかにはあまり
ないのではないだろうか。奈良の女子高で繰り広げられる物語。
時には、はるか昔の神の話まで飛び出して、事態は思わぬ方向に・・。
よくぞここまで話を練ったと、ただただ感心するばかりである。
奈良、京都、大阪の3校で争われる大和杯。そのなかの剣道の
試合の描写は迫力があり、読んでいてハラハラさせられた。
これで決着か!と思わせておいて、読者をあらぬ方向へ引っ張って
いく作者。「えっ!?この先何があるの?」「これからどうなるの?」
そう思いながらあっという間にラストへ。読後さわやか♪ 気分が
スカッとする作品だった。
鴨川ホルモー [DVD]
前半はそうでもなかったんですが、ホルモー初戦あたりから面白くなってきました。
意味不明な言葉と動きで、必死に戦う姿は笑えます(笑)
でも、不思議と格好良く見えてきたりもして…
主演の山田くんには最初から不安はなかったんですが、やはり良い演技をされてました。
コミカルな演技が斬新で、全体的に表情が良かったです。
特に、好きな女子を守るために仲間を捨て、「ゲロンチョリー!!」と叫ぶ姿に爆笑しました。
あのキレの良さと表情を思い出すたび、笑いがこみあげます。
(でも、ファンだから言いますが、髪はそろそろ切ってもいいと思うんだ。
顔は濃いし眉毛も太いんだから、せめて揉み上げだけでも短くしないと暑苦しいぞ。
あと、極端に声が小さくなったりするのが悪い癖です。)
栗山千秋さんは、やはり名女優さんですね。
ツンデレ具合が可愛らしく、壊れっぷりも良かったです。
チョンマゲの方も、最近よく見るのですが適役だったんじゃないでしょうか。
良いヘタレっぷりで、場を和ませてくれました。
芦屋役の方も、格好良くて迫力もあって良いですね。
実際オニの姿は見えるはずなくても、皆さん、違和感なく演じてらっしゃいました。
オニは可愛かったです。人によって武器や外見が違うのも、面白い!
ただ、戦いが2回しかなく、盛り上がりに欠けるのが少々残念です。
大きな相手と、チームみんなが力を合わせて勝つ!というのが見てみたかった。
連携技とか、戦略とか…戦いの見せ場を、もっと作ってほしかったかなと思いました。
かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)
小学一年生のかのこちゃんと 「夫人」と呼称がつく猫マドレーヌをめぐる
出会いと別れの物語。
雨の日の学校の昇降口、神社の祭りの夜店、夏休みの宿題、生え変わる歯の
グラグラ、思い出心がきゅんきゅん突かれる生き生きした場面の裏では
怪しい事態も進行中。
語り口はさりげなく 真面目で つい惹き込まれてしまう。
そこはかとない可笑しさと かのこちゃんたちの可愛さに和んでいるうちに
ほら話なのに いつも通り泣かされる。
温かい子供時代の思い出として 自分の記憶とはまた別に取っておきたいような
素敵なお話である。
万城目さんの文章は品がある。いつか「執事」の話を書いてほしい。
「日の名残」と「ジーヴス」の中間を狙って どうでしょう?