旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)
美術館に足を運び、西洋絵画に相対したとき、私は描かれた人物が嬉しいのか悲しいのか分からない。目を閉じて横たわる老人が、どのような生涯を送った人なのかが想像できない。主題となっている宗教的教養がないから。神話を題材としたものも多いですね。教養不足を痛感する瞬間です。
「絵は観て感じるものだ」という御仁もおられようが、私は納得できない。なぜ描かれたこの人は悲しそうなのか、なぜ天使がこの人を祝福しているのか、主題の背景を理解せずに絵を観賞することができるものなのだろうか。
というわけで、まずは宗教の理解を第一歩としました。旧約聖書→新約聖書→イスラム教→ギリシャ神話、という行程を計画。入門ガイドとして、阿刀田高氏の「〜を知っていますか」シリーズを手に取りました。ちなみに、私の宗教知識としてはAERAのムック「キリスト教がわかる」レベルです。
本著『旧約聖書を知っていますか』では、イエス生誕までの宗教エッセンスを抽出しています。神と人間とのつながりの始めからを、飽きさせず紹介していますので、初心者にうってつけです。ただし、氏の軽すぎる文体に馴染めませんでした。そこまで茶化す必要があるのかどうか、疑問視するところです。「新約聖書」、「イスラム教」に至るに連れて、この軽々しさはなりを潜めていきます。私としては読みやすくなりました。
イスラエルの建国が1948年。世界史で学んだイスラエル建国の意味する宗教的な重みを、より深く感じることができました。より多くの興味を惹起する書籍です。この本をきっかけとして、新約聖書やイスラム教にまで関心を広めるきっかけになれば、と思います。
私のギリシャ神話 (集英社文庫)
著者が、ギリシャ神話のどの辺に面白味を感じているのかということと、ギリシャ神話がとても好きなんだなあということが伝わってきた一冊。
「ギリシャ神話って面白いなあ。ちっとも古くさくないんだね」と、すごい昔の物語なのに現代に通じる英知のようなものを感じて、それがとても新鮮でした。
また、絵画や彫刻のカラー図版が多数、掲載されています。ゴージャスな雰囲気がありましたし、その華麗さが本書のアクセントになっていたように思います。
「こうだったらもっとよかったのでは・・・」と注文をつけたくなったのは、次の二点。
まず、本書10〜11頁にかけて掲載されていたギリシャ地図が見づらかったこと。見開き頁にまたがる部分の地図を左側にずらすなどして、読み手が見やすい配慮をしていただきたかった。
もう一点は、第二章「ゼウス」の中に掲載されていた「オリンポス十二神」の表と、巻末の「ギリシャ神話関連略系図」を、前述したギリシャ地図の頁近くにまとめて掲載して欲しかったこと。本文を読んでいて何度も眺めたのがこの三つの図表だったので、最初のほうにまとめて掲載されていると有難かったなと。
本書でピックアップされたギリシャ神話の神々(もしくは、人間)は、以下のとおり。
「プロメテウス」「ゼウス」「アルクメネ」「ヘラクレス」「アプロディテ」「ヘレネ」「ハデス」「アポロン」「ペルセウス」「アリアドネ」「メディア」「オイディプス」「イピゲネイア」「シシュポス」「ミダス」「ピュグマリオン」「ナルキッソス」「オリオン」
頭の散歩道 (文春文庫 (278‐3))
凄く古い本ですが、シュールさと云うか突っ込み所は健在。
今でさえ「騙し絵ミュージアム」なんて町中でも珍しくないですが、当時はこういう発想
自体で本にしてしまう事が珍しく感じました。
(今思うと、外国ではルイスキャロルなどがありますが...)
中学生時代に読んでた本ですが、20年ぶりに読みたくなったので購入しました。
ルネ=マグリットの事はこの本で知りました。
新約聖書を知っていますか (新潮文庫)
前作の「旧約聖書を知っていますか」に続いてとうとう西洋思想の大元、新約聖書の解説ブック。
私がキリスト教信仰に惹かれ、実際に教会に足を踏み入れるまで、ずいぶんとたくさんのキリスト教関連本を読んだが、阿刀田高さんはその中でも群を抜くほど面白かった。
「旧約聖書~」はユダヤ教という日本ではあまりなじみのない宗教のバックボーンとして読むことができる。
だが、新約聖書はモロ、生きたキリスト教の真髄であり、神学的カラーを除いてはこの書の意味を伝えることはできない。
旧約では確かに成功した、入門書としてのガイドブック化も、こと新約に至ってはずいぶん苦労されているのが文間に見える。
キリスト教を信じられるかどうかの最大の分岐点は、イエス・キリストを神の子と認!められるかどうかで、‘彼’を人間とし、復活を何かのイメージと捉えるならば、それはキリスト教をモチーフにした別物である。
阿刀田氏はあくまでも信仰者とは違う視点から、キリスト教のバックボーンが全く無い日本人向けに本書を書かれた。だから、もしこれからキリスト教を学ぼうとされているなら、本作はお勧めしない。
なぜなら・・・読みクチが面白すぎて、キリスト教の教会で信者の人たちが信じていることと、本書のギャップとの修正がかなり大変になるからである。