畜産市長の「口蹄疫」130日の闘い
美味しそうに育ったきれいな豚や牛が毎日ムダに殺されて埋められた口蹄疫被害の現場からのレポートが、2010年10月に1冊の本として発売されたことにこそ、素晴らしい意義があります。大量の家畜殺処分中の畜産農家さんたちの状況や気持ちだけでなく、殺処分にならずに済んだ農家さんたちの気持ちも書かれていて、人間の社会の複雑さを感じました。被害の出た全域でまだまだ大変なご様子ですが、終息宣言後、競りが開始されてから、あらためてみなさんに取材して今の心境を伺っているところに救いを感じます。
どうする・どうなる口蹄疫 (岩波科学ライブラリー)
口蹄疫にかかった動物への対応を、ウイルス学的アプローチで解説した本です。
ウイルス学の最新知識を得たい方、口蹄疫とはどんな病気なのか、海外での事例や対応などを知りたい方には、おすすめします。
大変面白い本です。
しかし。
当然ですが、殺処分を決定した農林水産省側も、口蹄疫では牛が死なないこと、ワクチンで牛を生かすことができること、口蹄疫が人間には無害な病気であることなど、知り尽くしていたのです。
ではなぜ、殺処分を決めたのか。
それは、牛肉の輸入制限や、輸出可能範囲など、極めて経済的、産業的な問題からだったのです。放置すれば、日本の畜産業は壊滅的な打撃を受けたことでしょう。
その部分は、この本を読んでも理解することはできません。
苦渋の決断の真の意味を知りたい方は、別の本にあたりましょう。