演歌・艶歌・援歌―わたしの生き方・星野哲郎
私は「星野哲郎を、知らずして 演歌を語るな!」と 言いたい。
星野哲郎さんについては、もう 10年ほどか前になるが 小西良太郎さんの著された
「海鳴りの歌 星野哲朗 歌書き一代」が とても強く印象に残っている。
こちらの「演歌・艶歌・援歌―わたしの生き方・星野哲郎」では
著者の佐藤 健さんが、新聞記者の経歴をお持ちで そのためか、かなり取材を徹底された
ことが判る 労作になっている。
星野哲郎さんの作詞は 美空ひばり、島倉千代子、北島三郎、都はるみ( 敬称略 )を初めとする
多くの歌手によって 歌われてきた。
昭和から 平成へと、日本歌謡史を語る上で 欠かせない存在である星野哲郎さん。
この本も そのような作詞が生まれてきた 根源はどこにあるのかと 探り求めながら
徹底した取材に基づいた 星野哲郎さんという 偉大な作詞家の一代記となっている。
不滅の名曲-オリジナル歌手による-星野哲郎作品集-
三百六十五歩のマーチ/真実一路のマーチ/ウォーキングマーチ
【三百六十五歩のマーチ】は演歌好きの祖母が幼稚園の頃にすすめてくれた1曲です。
水前寺さんのパワフルな歌声と覚えやすい歌詞で、毎日、家族で大熱唱していた1曲です♪
男はつらいよ 寅次郎音楽旅~寅さんの“夢”“旅”“恋”“粋”~
過去にリリースされた「男はつらいよ」シリーズのサントラCDとは違い、映画の中で流れた
音楽を、年代順に機械的に並べるのではなく、あくまでも音楽鑑賞用として「男はつらいよ」
の“シリーズ全体”を壮大にイメージ出来るような構成。しかもシリーズ全てを担当した天才
作曲家・山本直純の音楽だけにとらわれず、劇中で頻繁に、そして効果的に使用されたクラシ
ック音楽も織りまぜ、CDを再生する事によって「寅さんのいる風景」を体感させる事に成功しています。
まずCDを再生すると、シリーズ1作目からは、モノクロ画面に満開の桜が映り、寅さんが柴
又について語るモノローグの場面に流れる曲。まず、ここからグッと作品世界に引き込まれま
す。そして渥美清の主題歌と続いて、6曲目の「寅が故郷を想わざる〜望郷の念」の懐かしさ!
8曲目の「さくらとの再会」の美しさ!!
32曲目は、シリーズではしばしば使用されているヨハン=シュトラウス二世の「春の声」。寅
さんやマドンナが旅する鮮やかな映像を思い浮かべてウキウキと楽しい気分になれること請け
合いで、39曲目の『寅次郎忘れな草』では寅さんが北海道の原野を歩く場面に流れるリムスキ
ー=コルサコフの「シェエラザード」第三楽章「若い王子と王女」が、まさにタメイキものの
美しさ壮大さ!
こうしたクラシック音楽も含めて初めて「男はつらいよ」の世界が表現されるわけですが、こ
れは「男はつらいよ」のサントラとしては今までになかったと思います。このコンセプトの妙
には舌を巻きます。次々と繰り出される映画を彩った名曲の数々!! 何度聴いても感動でき
る!!! 旅の途中の寅さんが、すぐ側を歩いているんじゃないか、そんな気持ちにさせられ
ます。
音質の良さにも驚きました。トラック3には「寅次郎の口上」も収録されていて、まるで目の
前で渥美清が仁義を切っているかのように、彼の息遣いまでもが伝わってくるクリアな音。各
楽曲の音の良さも勿論で、何十年も前に録音されたシリーズ1作目と、最終48作目の曲の音
質を比べても、ほとんど違和感が感じられません。
解説書には、その曲がシリーズの何作目の、どういうシチュエーションで流れたものかも書か
れてあるので、観た作品ならば、すぐに映画の情景を思い浮かべられるし、その作品を観た事
がなかったり細部を忘れているという場合でも、「こんな美しい曲が、どんな映像で使われて
いたのか?!」と、無性にその作品が観たくなりました。
映画を観ている時には意外と気付かないものですが、「『男はつらいよ』シリーズの音楽っ
て、こんなに良かったのか!」と改めて思わされました。この感動は、解説書に書かれてある
「主役は三枚目でも音楽は二枚目じゃなきゃいけないよ」という故・山本直純の言葉、これに
尽きるのかもしれません。
まさに「これを待っていた!」というサントラCDです。シリーズ全体の膨大な音楽の中から
“寅さん世界”を体感できるように曲を厳選し構成するのは、おそらく想像を絶する作業だっ
たであろう事は、「男はつらいよ」のファンならば分かるはずです。
それを実現させた娯楽映画研究者・佐藤利明の見識とセンスにも脱帽で、これは「男はつらい
よ」シリーズの魅力を知り尽くした人でなければ出来ないCDだと思います。山本直純、渥美
清、山田洋次監督というシリーズ中心人物の写真で構成されたシックなジャケット・デザイン
が、それを象徴しているのではないでしょうか。
妻への詫び状―作詞家生活50周年記念企画
歌手、畠山みどりさんの「出世街道」という歌がある。 当時、大ヒットした歌である。
「やるぞ見ておれ / 口には出さず / 腹におさめた / 一途な夢を / 負けてなるかよ 〜」 と歌う。
星野哲郎さんが、演歌の新たなカテゴリーとして生み出した「援歌」所謂「人生応援歌」である。
力強い心意気の歌詞とは、角度を異にした どこか、哀調を帯びた感じが 印象深い作品となっている。
明るさ 100% の「人生は / ワンツーパンチ / 」と歌う 水前寺清子さんの「365歩のマーチ」とはまた違う。
この著作は、そんな星野哲郎さんの作品が 随所にちりばめられたエッセイとなっている。
写真も多く、楽しめる。
タイトルが「詫び状」となっているが、悪いことをしたという 懺悔録ではない。
演歌独特の言い回しで「母ちゃん、ゴメンな」という 今は亡き奥様への、感謝と愛情である。
この本を手に取ると 星野哲郎さんのどこか、優しくて温かいお人柄が感じられてならない。