SOUL 覇 第2章 2 (ビッグ コミックス)
まず、この漫画は万人受けするようには描いてないですから、読む際は注意が必要です。三国志ファンでもこの漫画が好きな方もいるだろうし、逆もまた当然(むしろこっちが多いかな)いるだろうし…ただ、なんだかんだ言って面白い、と自分は思います。“超”三国志から“真”三国志となり、はたまた“偽”三国志などと批評されながらもまだまだ展開が底を見ないのかな、とSOUL2巻を読んで感じました。相変わらずの名戦略を披露したり、前に比べて非情になっているものの“あいつらは負け戦ですぐ転ぶ”と言う台詞とあの“逆を斬った”行為は、“信に生き、義に殉ず”と言った頃の燎宇(劉備)は“まだ死んではいないぞ”と言う宣言にも見えました。最後に、1巻でのアイツは実は…です。1巻で裏切られた方は3巻を待て!
SOUL 覇 第2章 1 (ビッグ コミックス)
武論尊原作、池上遼一画『SOUL 覇 第2章』(小学館、2012年)は劉備を倭人とする異色の三国志である。元々は『覇-LORD-』という名前の作品であったが、倭軍の上陸という新展開を迎えるにあたってタイトルを一新した。
『覇-LORD-』の世界では劉備は残忍な人間であり、倭人の燎宇に殺害され、この燎宇が劉備を名乗っている。関羽や張飛と桃園の誓いをする点は三国志と同じであるが、この二人は横山光輝の『三国志』で描かれたような圧倒的な強さはない。曹操が後漢の献帝を殺害してしまうという史実を逸脱した展開になった。
『SOUL 覇 第2章』では劉備が倭国から大軍を呼び寄せ、中華を女王卑弥呼に服属させようとするところから始まる。実際のところは当時の倭国は中国から鏡をもらってキャッキャと喜んでいたレベルであり、中華に大軍を派兵するほどの国力はない。さらに呉が呉がローマの剣闘士奴隷を率いており、国際色豊かである。漢民族中心の中華思想の歴史観とは異なるフィクションを提示する。
他にも趙雲が女性で、呉がキリスト教を信奉するなどユニークな設定が目白押しである。関羽と張飛が劉備から離反するなど三国志の内容からも大きく逸脱している。諸葛亮も劉備とは独自の立場で行動している。三国志で活躍する人物が、あっけなく退場するという驚きの展開も用意されている。(林田力)