生きるなんて (朝日文庫 ま 3-3)
本のタイトルにつられて何気なく手に取った本だったが読んでみて大きな衝撃を受けた。
両頬を思い切り往復ビンタされたような気分になった。
手ぬるい事は一切書いてない。終始一貫しているのは「自立して生きる」ことである。
「癒し」だの「自分へのご褒美」などがはびこっている今の世の中に対して
一刀両断に切り付ける辛口の文章は爽快でさえある。
自分に気合を入れたい人には、是非お勧めしたい一冊です。
新・作庭記
今だに怒っていますね。ただ、今までの怒りとは異なり、自己分析も踏まえており、自身の恥部も披瀝しているので、多くの人々に対して分かりやすい表現になっていると思います。このレビューに先行する2つのレビューに関しては、全くそのとおりだと感じます。ただ、少々付け加えたいたとがあります。著者は、モネの庭を評価しないとの記述がありました。私も、モネの庭は感心しませんでした。その理由がこの本を読んで理解できたのでした。著者の認める芸術家が、バッハ、ゴッホ、メルビルだけだという勇気ある限定も暴力的で痛快です。
ヘルマン・ヘッセ『庭仕事の愉しみ』草思社の221ページに次のような記述がありました。「・・・、私らヨーロッパの者は残念ながら本当の庭つくりとは言えない。日本人がどんなに庭を美しく作ることができるか見なくてはならない!」ヘッセの庭に対する偏執も同じところに根ざしているのではないでしょうか。
田舎暮らしに殺されない法 (朝日文庫)
のどかな暮らしに憧れて老後に都会から田舎に引っ越そうとする人に警鐘を鳴らす一冊。実際に田舎に住んでいる作者だからこそ言える田舎暮らしの実態が描かれているので、引越しを考えている人は一読しておく価値があると思う。
自分自身はまだ引退には少し時間があるが、確かに妻と老後は景色のいいところで過ごすのもいいねという会話をすることはある。決して本気ではないが、人が溢れかえっている都会に住んでいると何となく憧れる気持ちが沸いて来ることはあるのだ。
しかし頭に描いたイメージと実際の生活が大きくかけ離れているのは当たり前のことであり、それを忘れてはいけないという気持ちは有している。従って本書に描かれている田舎生活の実態にそれほど驚くこともなかったが、それよりぐさっと来たのは作者の「あなたは自立した大人ですか」という再三の問いかけだ。
引退した時点で「生涯にわたって追い求め、徹底して打ち込める仕事や趣味を持っていて、即、そうした日々へと移行できるようでなければ、これまで無駄で無意味な人生を送ってきたことになってしまったと言えるのです」といった言葉は、今の自分には厳しく響いた。