プラトーン (特別編) [DVD]
国家間の戦争や戦闘についての映画や本はそれこそ古代から数え切れないほどあるが、一個人が体験する戦争についてここまでリアリティと説得力のある作品はいまだかつてなかったでしょう。ベトナム退役軍人に「ジャングルの匂いがしてくる」とまで言わせるほど当時の風俗を完璧に再現しており、俳優さんも全員軍事訓練を受け、数十キロの背嚢を担いでくたくたの状態で撮影しています。無能な上官や常に死の危険にさらされ疲労と睡眠不足でいつも殺気立ちイライラしている同僚との人間関係、ひたすら退屈でうんざりする行軍や待ち伏せ、炎天下の塹壕掘り。華々しい戦闘が戦争の全てではないことを改めて認識させられます。もう100回以上繰り返し見ていますが、オリバーストーン監督が言うようにバーンズ(現実)とエリアス(理想)の戦いの壮大な神話としても見れると思います。
饗宴 (新潮文庫 (フ-8-2))
新潮・森訳の感想だが、日本語が平易でこなれていて、特に登場人物達の会話の間が非常に読みやすかったと思う。一方で、岩波版のレビューで挙げられていた岩波版冒頭の誤訳疑惑(=最初の頁の「坂を上っていく」云々)の箇所は、新潮版も岩波版と似たような訳になっている(笑)。といったような、細部を専門的に評価する必要のない素人読者としては、以下の点が面白かった。
-1.
「愛について」という邦訳副題にあるように、本書はソークラテースの他、彼の愛人アガトーン(悲劇詩人)、ソークラテースの批判者であるアリストパネース(喜劇詩人)、など6人の論者が「愛とは何か」を議論した酒飲み話として書かれている。ここでソークラテースは他の5人と違って、愛を無条件に至上のものとは受け入れなかった。人は欠乏・不完全さを抱えるが故に、「愛とは、善きものが、永久にわが身のものになることを、目的としている」(89p)、「愛の対象とは不死でもある」(91p)と整理しているのだが、具体的な行動としては、一人の少年や人間、あるいは一つの営みに執着せず、無限の美と知識愛を観照することを賞賛する(99p)。そういう意味では、彼にとっての「愛」とは永遠を志向する以上は未完で終わらざるを得ないプロジェクトなのであり、それ故に愛の対象を至上の善とするなら、知を愛し求める人は「知者と無知者の中間」(84p)に留まらざるを得ない。このようなある種諦観的なビジョンはそのまんま近代哲学の認識論の本流にまで繋がっていくものだが、これが実際の恋愛行動に落ちると、彼の場合は本書でも何箇所かで触れられているが、情熱的に美少年達を追い回すということになる(笑)。確かに理屈の上では一貫性があるものの、言ってることの高尚さとのギャップが笑えた。
-2.
本書最後の登場人物はアルキビアーデスという人だが、この人は権力を追われた軍人政治家であり、彼が弟子だったことがソークラテースの死刑の遠因になったとされている。プラトーンは本書の中で、二人の関係がアルキビアーデスの横恋慕であるとしており、師の死が不当だったことを告発しているが、同時にこの片思いが、この会話劇の中で酩酊状態の彼が語る師への愛(=不完全な弟子が完全な師に恋焦がれる愛)とソークラテースの語る永遠への未完の愛とのギャップ、彼らの間の座る位置をめぐるやりとりに重ねられている。この何重にも意図が重ねられた最後のオチの構成力は、さすがプラトンである。他の論者達の語る愛の語り口も、詩人やソフィストの話振りがパロディ的に真似られており、本書を哲学書であると同時に文学書として楽しめたという感想が多いのも頷ける。
-3.
本書解説を見れば分かるように、古い作品だけあって解釈が如何ようにもできる不透明な箇所が少なくない。西洋哲学がテキスト論や文献学・解釈的方法論を延々と問題にしてきた理由の一つに、源流である古代ギリシャ哲学を読むことが既にそういうテクスト論を強いてくる点にあるのかもしれない。
ソークラテース自身は重層歩兵として従軍経験もある人だが、かなりマッチョでエネルギッシュな生を楽しんだらしいことが本書のエピソードからは感じられる。が、一方で生きた話し言葉を書きおとすことを拒んだために、後世の我々は彼が実際に何を考えていたのかは弟子達等の文献から間接的にしか分からない。でも、これも「永遠」の前で「未完」にあることをポジティブに受け止めた彼らしいエピソードだと思う。
【ムービー・マスターピース】 『プラトーン』 1/6スケールフィギュア クリス・テイラー
映画「プラトーン」を観てから,もう何年経ったのでしょうか。
ストーリーへの記憶は,今や随分と曖昧になりつつありますが,主人公クリス・テイラーを
演じたチャーリー・シーン氏の若々しい容姿だけは,今も鮮明に瞼へ焼き付いています。
深い緑の軍服に逆らうかのような,赤いバンダナ。
神経を張り詰めさせた表情。
そして,体に圧しかかるように背負われた大きなリュック...。
これ程までに,彼を憶えているのですから,今回発売された【ムービー・マスターピース
『プラトーン』 1/6スケールフィギュア クリス・テイラー】には,少しばかり厳しい評価を,
なんて偉そうに考えていました。
ところが,いざ手にしてみますと,もう非の打ち様がない。
眉間の皺から爪先まで,クリス・テイラーもといチャーリー・シーン氏,そのままの出来。
あのバンダナはきちんと布製ですし,ヘルメットに書き付けられた言葉まで忘れていない。
それに付属する銃火器,アクセサリー類も1つ1つ丁寧に作られていました。
中でも折畳み式のシャベル,この芸の細かさには脱帽でした。
もし,どうしても気になる点を挙げるとすれば,それは姿見ではなく関節の緩さでしょうか。
普段のホットトイズでは考えられない程,関節が柔らかく,少し心持たない感じがしました。
まあ,遊びまわす訳でもありませんので大目に見るべきかとも思います。
何れにせよ,総評は“ホットトイズ恐るべし”で,実に見事な完成度でした。
このフィギュアを眺めながら,レビューを書き綴るうち,今一度プラトーンを観たい,そんな
気持ちになって来ました。
そうした気持ちにさせてくれるのは,やはり,このフィギュアが驚くべき存在感を有し,精巧
で,素晴らしいものだったからという事なのでしょう。
ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン (新潮文庫)
僕にとって本書は学生時代に単位のために読まされた本の一つ.読まされて良かったと思える数少ない本の一つ.「知識人とは何か(byサイード)」を読んだことと裁判員制度導入に関連して読み返してみた.とくに「ソークラテース(ソクラテス)の弁明」は文句無しの必須教養中の必須教養だと思う.宗教上の理由や元文学少年少女の推薦を頼りにせずに,軽く2000年以上の時を経て読まれ続けている名作中の名作である.
哲学書として読むと,「自分が何を知らないか」を知ることの重要性を説いた,難しい話や専門的な話の前に把握しておかなければならないお話.将来において頭の固い中年や頭の固い老人になるリスクをぐっと下げてくれる.一部の教師や一部の上司を「学ぶ価値なし」と判断するためのものの見方を提供してくれる.文学作品や記録として読むと,当時の社会事情を知らないとイメージがわきにくい表現が多いものの,名ゼリフだけで短くまとめられた戯曲のような,読んでいて快適な文章である.
ソクラテスは現在の言葉で言う「痛いところを指摘した罪」「目立った罪」で告発され,「冤罪」「誹謗中傷された罪」で有罪判決を受ける.刑量の決定においては,今でいう「最後まで無罪を主張した罪」により,結局は死刑判決を受ける.そして毒を飲んでこの世を去る.「ソークラテースの弁明」と「クリトーン」は,大昔の裁判の顛末を描いたものである.まるで21世紀の日本のいくつかの裁判を脚色したような内容であるともいえる.
ワルキューレの騎行(地獄の黙示録)~映画のなかのクラシック
「ワルキューレの騎行」を聴きたくて購入しました。
ワーグナー好きなんですが、お店にあんまり置いてないんですよ。癒しクラシック全盛のせいでしょうか?
どれも耳慣れたクラシックだけあって、じっくり浸るにふさわしい!
作曲者が自分の気持ちを前面に出てて、わかり易いのです。
これを聴きながら作業をすると、地の底から何かが湧いてきて元気が出るのですが…私だけ?
岩山を登っていくイメージをお探しの方はどうぞ(^o^)丿