銭形平次の心―野村胡堂 あらえびす伝
野村胡堂は岩手県出身、小説家で「あらえびす」という名の音楽評論家。
かの有名な「銭形平次」の作者の分かりやすい伝記です。
本のカバーは、新渡戸稲造も似た柔和な顔の胡堂が、
ハットをかぶっている全身像。よい装丁です。
胡堂はその性質が高潔です。その妻ハナも同様です。
銭形平次には、殺しはありません。平次は人を責めません。
しかも窮状の末罪に走った罪人に、心底同情して逃がします。
胡堂はキリスト教の敬虔な信者であり、人に優しく、友人と家庭を大切にし、
死後はその遺産を「野村学芸財団」として学生の奨学金をもうけました。
その精神が作品にも反映されています。同時に、
人となりに感銘を受けます。ふところが深い素晴らしい人物です。
我より人を。慈愛とはこのようなことを指すのでしょうね。
読み物として面白いばかりか、音楽にも胡堂にも興味が湧いてきます!