きのうの神さま
地方医療に携わる誠実な人たちを題材に、5編の美しい物語が展開される。緩急のつけかたといい、描写と省略の妙といい、短編のお手本のような見事な作品集。映画作品の関連小説だということだが、この作品集は、これだけで十分完結している。映画を見ようが見まいが、どちらでもいい。
中でも、「1983年のほたる」が特に素晴らしい。この作品だけ医療と無関係だが、おそらく女医の少女時代の回想のような一編である。片田舎から地方都市の進学校へと進む少女の心の成長が、美化も卑下も排してみずみずしく描かれている。ひっそりと消えていった別な少女の面影とともに、水辺のガラス片のようにきらきらと美しい。
きりんのなみだ
CDの帯にこう書かれていた。
この声で誉められたい。この声で叱られたい。
本当にそう思う。
八千草さんは、もう80歳になられるお歳だが、今もなお純情可憐な可愛い女性だ。
映画に出ても、テレビに出ても、やっぱりチャーミングで可愛い方である。
このCDは、その八千草さんの朗読ということで、中味も知らずに即購入した。
内容は、昭和20年代の小学生の詩というか作文だ。
子供たちの作品を八千草さんの優しい声で聞くと、じんわり胸の奥が暖かくなってくる。
唯一残念なのは、音楽のボリュームが少し大きいような気がする。
折角の八千草さんの声が少し聞き取りにくい。
でも、とても良いCDだ。
夜に一人で聞くと、亡き母を思い浮かべ、涙が出てきそうになる。
お薦めの1枚だ。
蝶々夫人 MADAMA BUTTERFLY - DVD決定盤オペラ名作鑑賞シリーズ 8 (DVD2枚付きケース入り) プッチーニ作曲
八千草主演の映画蝶々夫人を待っていた。こんなところ(世界文化社)から出ていようとは!この当時にイタリアにこのようなセットを用意できたことだけでも奇跡に等しい。日本人が見てもなんの違和感がないのはすごいと思う。そして八千草薫の蝶々さん…悲しくなるくらい可憐で美しい蝶々さんである。そのあどけない笑顔を見て涙があふれた。これこそプッチーニが思い描いていたであろう蝶々さんの理想の姿であろう。八千草薫は吹き替えではあるけど、すべてイタリー語の歌唱を覚えたのだろうか?すごい根性である。映像はどの場面を見ても息をのむほど美しく、名画のようだ。そしてプッチーニの音楽がそれをいやがうえにも高めている。音楽は映像上つぎはぎだらけになっているが、これは許せる範囲であろう。