信長 7 風雲の巻 (MFコミックス)
「ここに古今無双の城を築く」
誰もまだ名さえ知らぬ所、安土。しかし、麓の湊より京まで半日、しかも
関東、北陸、近畿をにらめる場所。天下を取った後の都としてふさわしい場所は
他にはない。ここに信長は日本最大の城を築こうとする。
それはあたかも信長の天下布武を祝うモニュメントの様でもあった。
しかし・・・
「この久秀、すきあらば何度でも天下を狙いまする。」
「捨てたのではございませぬ。信ずる者どもより、捨てられたのでございまする。」
反逆という己の本懐に殉じた松永久秀、部下が一向宗信徒であったために裏切られた荒木村重、
天下布武の元で味方の苦楽を共にした部将との別れが生じていく。
そして・・・
「肉親への愛、人間への絆なくして、何の天下布武でありましょう。
不信と憎しみしかない世は、ただただ空しいばかり」
明智光秀・・・信長の配下ながら、類い希なる教養と誠心を備えた者。
信長をひたすら手本として生きる秀吉の割り切りをもし彼が持っていれば、
歴史は全く異なるものとなったであろうに。
紀伊雑賀への遠征、丹波波多野との攻防。できる限り戦火を避けようと
する光秀と、天下のため愛を断ち魔王となろうとした信長。
二人はいずれ袂を分かつ運命なのか・・・
戦が続くに連れて、両者の間には埋めることのできぬ深い溝が生じていく。
この溝が拡大し光秀を覆い尽くしたとき・・・
乱世は復讐の狂気を生む。
覇―LORD― 19 雑草 (ビッグコミックス)
劉備玄徳、談。
「雑草には、規律も何もなし。放置しておくと、無秩序に伸び、周囲の環境をあらしてしまうのだ。」
倭の国からやってきた盗賊:常元を表現した、まさに至言。
しかし、「覇」は、常元がいてこそ、前に横に物語が転がるのだ。
常元なき「覇」は、空虚な歴史物語に堕落してしまう。
人として最低の存在、常元は、とにかく、他者を荒らしまわる。
そこにあるのは、自分が生き残ることのみ。
それ以外の価値観なし。
この怪物を、この物語は、どこまで育てていくつもりなのか?
妖怪になりたい (河出文庫)
本書は『水木しげるのカランコロン』の再編集本です。『カランコロン』所収のエッセイのうち、対談・インタビューすべて(計13)と一部のエッセイ(計25)、マンガ(計2)をはずし、新たに19のエッセイを加え二分冊にしたものが、本書と『なまけものになりたい』です。
本書に新たに追加されたエッセイは12編で、巻末には池上遼一先生と著者との談話があとがき対談として収録されています(下記参照)。つげ義春氏と筆者との交遊や、つげ氏が「紅い花」の主人公の名前が思い浮かばなくて水木プロのソファで寝っ転がって考えていたなど、池上先生は興味深い話をされています。
あと、水木先生が「白土三平は生きてるわけ?」とたずね、池上先生が「存命です」と答えるくだりを読めただけでも、本書を手にした価値があったかなと思いました。
追加エッセイの数が『なまけもの』より多いこと、水木先生の対談が収録されていることを重視される方は、まずこちらを読まれることをおすすめします。
「落第記」思想の科学1981年1月号
「さつま芋」宝石1977年11月号
「貧乏なのに働かない趣味人」文藝春秋2001年7月号
「運動不足解消が必要」宝石1975年4月号
「水泳」週刊新潮1994年10月6日号
「世の中には不思議なことが多すぎて・・・」芸術新潮1996年3月号
「私は死者に『引っぱられた』」週刊読売1977年8月13日号
「今も聞こえる兵長の『パパイアはまだか」」週刊読売1984年8月12日号
「踊り好きの初年兵と密林の少年トペトロ」アサヒグラフ1994年11月18日号
「アボリジニの魚」文藝春秋2000年1月号
「精霊の呼び声」アサヒグラフ1993年12月10日号
「妖怪踊りの輪に加わった」朝日新聞1998年7月30日夕刊
「あとがき対談 『鬼太郎』連載時の水木プロのこと 水木しげる×池上遼一」