金曜日の妻たちへ DVD-BOX
DVDで観られるとは。シリーズ化されたが、個人的には第一作が一押し。「風に吹かれて」のせつないメロディーとともに、あの場面、この場面が思い出されて、無性に懐かしくなった。
郊外のお洒落な一戸建てに住む三十代から四十代の夫婦三組が織り成す人間模様だが、お互いにしょっちゅう行き来しあう大人の友達関係が、当時学生だった私にはまぶしかった。スキー旅行に出かけた六人が、二人三脚のように肩を組んで歩くシーンが象徴的だった。夫婦の不仲、夫の浮気、友情の危機といったさまざまな波乱をふくんだ関係ながらも、お互いに気心が知れていて、信頼しあった仲間だからこそ、結局はわかりあえる。そんな大人の関係が肌理細やかに描かれている。
泉谷しげるの役所勤め役も必見。個人的には加藤健一事務所の舞台の長年のファンなので、若かりし頃のカトケンさんが三枚目の役で出ているのも要チェック!!
金曜日の妻たちへ〈3〉恋におちて〈下〉 角川文庫
3作品あるこのシリーズの中でIIIは一番おもしろい作品です。これはバブルの頃の作品ですいわゆる不倫が正当化された形で描かれています。こんな時代がきたらやってみたいたいと思う不倫物語・・そんな感じです
金曜日の妻たちへIII 恋におちて DVD-BOX
1985(昭和60)年8月から12月にかけて放映。この年、テレサ・テンの「愛人」などもヒットしていたため、このドラマも“不倫ブーム”―って何なんでしょうね、一体……―の象徴、みたいな不可解なくくり方をされていたけれど、『飛び出せ!青春』『俺たちの旅』などの傑作ドラマを次々にヒットさせてきた鎌田敏夫さんが脚本を手がけただけあって、そんな安易なものではない。不倫という以前に、恋というもののせつなさや不思議さ、その“静かな嵐”の中やまわりで翻弄される人々の心の動き、そしてひとりの人を大切に思って生きることの難しさや素晴らしさも、しっかりと描かれている。当時、青春まっさかりだったオレも(自分で言うかな…)、地元・仙台でもちょこっとロケが行われたこともあり、見事なまでにハマってしまったのだった。
本作の重要なモチーフとなった佳作『恋におちて』をはじめ、オンエア版では『バック・トゥ・ザ・フューチャー(パート1)』など、数々の洋画のシーンが登場するのも魅力だったが、このDVDでは『恋におちて』の映像を除き、すべてカットされている。また、喫茶店などでのシーンの店内BGMは、基本的には差し替えられており、それによりセリフが聞き取りづらくなってしまっている部分もある(ちなみに、子供が遊んでいたファミコンゲームの映像はカット、音声は差し替え)。しかしその一方で、再放送などの際にはカットされることの多い、本放映で22時ちょうどに流れていた提供クレジットの背景映像、次回予告、さらには主題歌レコード(!)プレゼントのお知らせなどが収録されており、1985年当時の雰囲気を多少なりとも味わうことができる。
懐かしさと、色あせない華やかさとともに(画質は多少、劣化していますが…)、誰かを大切に想う気持ちを思い起こさせてくれる、見ごたえ十分の傑作ドラマとしておすすめします。
恋におちて
ドラマ『金曜日の妻たちへ』のパート3『恋におちて』の主題歌。1と2では外国の曲を主題歌としていたが、この作品では日本の曲が使われた。なお、「恋におちて」はおそらく登場人物の仕事の関係で登場する映画『恋におちて』(ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープが主演)からつけられたのだろう。
1番の歌詞に「ダイヤル回して」とあるように、携帯電話どころかプッシュホンですらない電話に時代を感じると同時に、その動きを想像して「切なさ」も感じてしまう。また、2番の歌詞「両手で頬を押さえても 途方に暮れる夜が嫌い」の部分に、不倫とは言え、切実で深い思いを読みとることができる。“不倫”がファッションなどではなく、“大人の恋”の一つの形であった時代の名曲だ。