放浪記 [DVD]
中島みゆきの作った歌を歌うときの研ナオコのようなキャラを、凄いブスづくりで好演してます。大家になってからの林芙美子は、当時そんなに特殊メイクの技術はなかったろうけど、リアルに老けて見えます。
公開当時この演技は評判いまいちだったらしいですが、いとしのデコちゃんがあんな姿を、って引いた人が多かったんだろうなあ。今こそ堪能できる名演技。
文士連中の乾いた付き合い方もリアル。
稲妻 [DVD]
母子家庭・父親がすべて違う三女一男の末娘(高峰秀子)から見た人生のつらさ、みにくさ、空しさが、繰り返し描かれます。そこから抜け出したいと願う感情が高まるたび、流れ出すテーマ曲。主人公の心を代弁するその響きには、この映画が表現する「気高さ」が宿っています。ラスト、稲妻に促されるように感情を吐露し、母と和解する展開は、彼女の家族への反発が決して独りよがりではなく、心を通じ合わせることもできる真っ直ぐなもののあらわれ、ということだと感じます。
林芙美子の原作もぜひ読んでみてください。映画化の際、物語がどれほど整理され、見通しよく脚色されているかが分かります。その点では原作以上の出来栄えではないでしょうか。晩年の成瀬監督はこの作品を最も愛していた(あの傑作『浮雲』よりも)といわれています。
Jブンガク マンガで読む 英語で味わう 日本の名作12編
マンガと英語で近代文学を覗いてみる本。
明治から昭和初期の12作品が紹介されています。各作品には18ページずつ割かれていて、その18ページが更にいくつかの小部屋に分かれているので、どこからでも読めます。まるであらかじめつまみ食いされる事を想定しているかのよう。気軽に読める本ですね。
マンガと日本語と英語で粗筋が紹介された後、『キャンベル先生のつぶやき』という部屋では原文と英訳文が示されます。日本文学の専門家であるキャンベル先生が、英訳に際して感じたことなども書かれていて、敷居の低い本書の端倪すべからざる一面が垣間見えます。
文学の紹介本としてはかなり異色の一冊かもしれませんが、読み易いです。
浮雲 (新潮文庫)
恋愛小説の傑作といえば、なんといってもこの「浮雲」。
男と女の切れそうで切れないぐずぐずした腐れ縁が、見事に書かれている。恋愛の本質が濃密に表現されていると思う。
私にとって、「富岡」はまさに「男」、「ゆき子」はまさに「女」。
富岡のクールな感覚は、男そのものだ。それでいて芯には優しさがあるのだけれど。
最後の場面が悲しいけれどもとても好きです。
放浪記 (新潮文庫)
著者が書き留めた日記の中から、抜粋して第一部を発表すると、大反響となった。そのため、さらに抜粋し第二部、第三部と発表し、それらをまとめた一冊である。
となれば、第一部が一番イイに決まっていると思っていたが、そうでもない。第二部の冒頭でやられた。感情表現がストレートで、心にどうしても染み入ってくる。
逆境にあるなかでも、明るくて、可愛くて、したたかで、好感がもてる。